募集条件に合わない女の子が面接に来る理由
風俗店を長く経営していると、様々な女性が求人面接にやってきます。
もちろん、女の子がドタキャンをして待ちぼうけを食らうことなどしょっちゅうですし、見た目は女性なのに中身は男性だったという方がいらしたこともありました。
当店は「ぽっちゃり」をコンセプトにしているソープランドですので、面接にいらっしゃる方の多くはふくよかな体型の方が多いですね。
しかし、中には募集条件に全く合わない女性が面接にやってくることもあるのです。
4年ほど前だったかと思います。
「求人広告を見て電話をした」という、25歳ぐらいのH嬢という女性に面接をしたことがあります。
若い年齢にも驚きましたが、黒髪清楚系の美人さんで、どうして当店のようなぽっちゃり専門のソープランドで働きたいのか、分かりませんでした。
「短期でお金が欲しいので、求人広告を見て働きたいと思いました」というH嬢さん。
体型はいたって普通で、ぽっちゃりと言うには無理があるのですが、若くてとにかく美人。
確実にお客さんに喜ばれそうな、なかなか風俗業界では見かけない希少な雰囲気の女性だったので、入店していただくことにしたのです。
ぽっちゃり店なのに普通の女の子を採用した理由
話を聞いてみると、H嬢は4年制大学を卒業している才女。
どうして学歴もある若い女性がこんな田舎のソープランドで働きたいのか、ますます分からなくなってしまいました。
歓楽街だとお店も女の子もライバルが多く、落ち着いて稼ぐことに集中できないし、当店の「癒しを提供する」コンセプトに深く共感しているとのことでした。
その他にもH嬢さんが求人面接で語った話には、若いのによく風俗業界を知っている子だなあといたく感心したものです。
確かに彼女の言う通り、お店の立地にはお店で働く女の子にとっても重要なポイントになります。
大都会の歓楽街には、非常に多くの男性客が訪れますが、その分お店も多くあるのが当たり前です。
そんな中で少しでも多くの男性客を獲得しようと、各店がサービス競争や価格競争を始めます。
ここには一つのジレンマがあり、いくらサービス内容をハードにして他店と差を付けたとしても、サービス料を同様に値上げして差別化を図ることが出来ないのです。
お客様というのは、より良いサービスをより安く楽しみたいと考えるものなので、いくらサービス内容を大胆に変更したとしても、サービス料に関しては大して変更が効かないものなのです。
もちろん、サービス料を安くする分には問題無いのですが、高くなるとなるとお客さんの動向は非常にシビアになります。
お客様は、サービス内容はもちろんのこと、価格的なメリットも無ければ来店頻度は減ってしまいます。
その結果、趣向を凝らしてリニューアルをした所で、お店の売り上げが減ってしまうということが起きやすいのです。
また、何か月かに一度のリピーターさんの為に、色々なアイデアを考えたとしても、フリー客を獲得しなければお店は経営はジリ貧です。
しかも、ライバルとなるお店は風俗店だけとは限りませんから、キャバクラやセクキャバ、居酒屋やギャンブル店などの動向もチェックが必要です。
求人広告を通して面接を受けているのは風俗店だった
つまりは、彼女が当店の面接を受けた理由は、当店が彼女のお眼鏡に適ったということだったのです。
私も長くこの業界におりますが、目から鱗が落ちた気分でした。
やはり私も、心のどこかでお店が女の子を選ぶんだという意識があったのだと思いますし、コンセプトが明確なお店であればあるほど、その思いは強くなると思います。
しかし、H嬢さんとの出会いにより、女の子たちの中にはしっかりと求人広告を読み込み、我々お店側の人間がやっていることを評価している子がいると知りました。
面接官を始め、私たちは「見ている側」の意識が先行しがちですが、実は最初に「見られている側」であったのです。
この出会いをきっかけに、私は今まで以上に気を引き締めて経営に向き合ってきました。
お客様が多ければ多いほどライバルも増えていきます。
そして、そのライバルたちも次々と現れては消えていきます。
デリヘルやホテヘルを中心とした新しいお店との、移ろいやすいフリー客の争奪戦を続けていくには並大抵の努力では太刀打ちできません。
そしてお店で働く女の子たちも、人気店に入店できたからといって安心は出来ません。
遂にあの店がトップを取ったと聞いた3か月後には、そのお店が閉店しているなんてことはよく耳にするのがこの業界です。
都会の派手なお店は消費されるのも早いものです。
対して、郊外や地方の店は一見地味かもしれませんが、その分ライバルも少なく、一定数の常連客を中心にしっかりとしたサービスを提供し続ければ、末永く支えてもらえるものです。
そして、H嬢さんが働きだしてしばらくが経ち、「ややぽっちゃり」になって、ようやくお店のコンセプトに合ってきたなと感じた頃に、忽然と姿を消してしまいました。
それでも彼女は、私の中で色濃く記憶に残っている数少ない風俗嬢の一人となったのです。